深部静脈血栓症
深部静脈血栓症とは
深部静脈血栓症とは静脈の閉塞によっておこる還流障害の代表的疾患であり、深部静脈血栓症の90%以上は下肢に起こります。下肢に大部分が起こる理由は、立位で生活する人間では、血液にも重力がかかるため、心臓からもっとも遠い距離にある静脈血は重力に逆らって上昇しなければならないためと考えられています。
症状は静脈うったいや炎症により、腫脹、疼痛、色調変化などが見られ、血栓の部位により、下肢全体や下腿にのみに見られます。
このような方に対して低侵襲検査(血管エコー、CT)を積極的に行い、より早期に発見し、治療することが患者さんのQOLをよくするものと考えております。
急性期治療に加えて大切なことは深部静脈血栓症を起こした原因の診断、肺塞栓症の予防、血栓症再発の予防、静脈血栓後遺症(血栓後症候群)の予防などがあります。
急性期治療では
重症例を除き、点滴あるいはカテーテル投与による線溶、抗凝固療法が用いられることが多く、血栓症のあとには抗凝固薬をしばらく内服していただき、再発、肺血栓塞栓症の発生に注意していきます。従来は入院での治療が一般的でしたが、近年新規抗凝固薬が保険適応となり、皮下注射や内服を通院治療で投与されることも多くなってきています。
内服抗凝固薬について
ワルファリン
50年ほど前から現在に至るまで広く使用されている内服の抗凝固薬です。以前は唯一の経口抗凝固薬であり、歴史が長いため、治療に関するデータが多く、様々な分野で使用されています。現在は直接経口抗凝固薬が使用される場面が増えてきていますが、疾患によっては現在も第一選択として使われています。
利点:歴史が長くデータが多い。薬価が安い。
欠点:血液検査で効果を判定する必要がある。食事内容(納豆など)に制限がある。
直接経口抗凝固薬
エドキサバン(リクシアナ)、アピキサバン(エリキュース)、リバーロキサバン(イグザレルト)、プラザキサ(ダビガトラン)
2011年から使用可能となった、経口抗凝固薬です。当初は新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants)と呼ばれましたが、現在では直接経口抗凝固薬 (direct oral anticoagulants) という名称へ変更されています。新しい薬剤ですが、ワルファリンとは作用機序が少し異なる特徴を持っていることから、使用される場面が増えてきています。
利点:血液検査での効果判定が不要。食事に影響を受けない。効果発現が早い。
欠点:薬価が高い。過少/過量投与の判断がつきにくい。
当科ではこれらの薬剤を、患者さんの疾患や状態に合わせて、適切に判断し、血栓症の治療を行っています。
また、血栓後症候群予防のため、以下のような日常生活指導も行っています。
- 長時間の立位や座位をさける。
- 下肢挙上で休息、就寝する。
- 適度に歩く。
- 足を局所的に締め付けない。
- 正座を避ける。
- スキンケアを行う。
- 弾性ストッキングを着用する。
- 薬を正しく服用する。
いずれにしても、症状増悪時には早期に医師を受診することが大切です。
Case 1 肺血栓塞栓症(下肢深部静脈血栓症合併)
治療前 両側肺動脈に広範な血栓認める |
治療7日目 血栓は半分消退 |
治療1ヵ月後 血栓はほぼ消失 |
Case 2 左鎖骨下静脈血栓症
治療前 黄色括弧内に血栓閉塞認める |
治療1ヵ月後 血栓はほぼ消失している |
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